空中秘密基地 2

映画や本の感想が中心です。当然ですが僕の主観と偏見で書いてます?

フィクションで描くということ

『SHARING』(監督:篠崎誠 2014 / 日本 111分)

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【あらすじ】

東日本大震災予知夢を見た人を調査している社会心理学者の瑛子は、震災で死んだ恋人の夢をずっと見続けていた。一方、同じ大学の演劇学科に通う薫は、3・11をテーマにした卒業公演の稽古に追われ、ある日、仲間と衝突してしまう。薫もまた、この芝居を始めてから、同じ夢にうなされるようになっていたのだが……。(映画.comより)

 

静かな、とても静かなホラー映画。

劇中には心霊現象やドッペルゲンガー、存在しない過去の夢などは登場する。しかし本当に怖いのは、それらではない。入れ子のように繰り返される映像が、登場人物のものなのか、自分のものなのか、彼我の区別がつかなくなる感覚にこそ恐怖を感じる。

3.11により変わってしまったこの国の空気を、映画という形で表現している。3.11後に作られた映画は、どうしても生き残った者の語りになってしまう。それは仕方のないことだ。しかしこの作品は死者の言葉に耳を傾けようとする。それは同時に当事者でない者は何をシェアできるのか?何かをフィクションで描くとはどういうことなのか?という問いを僕たちに突きつけてくることでもある。

衝撃的なラストシーンや主人公である瑛子が見たものは何であったのかについては、映画館で確かめてもらうしかない(DVD化はされないらしい)。でもあの時に感じた不安は確かにそこにあった。

この映画には111分のヴァージョンと91分のアナザーヴァージョンがある。同じストーリーだし、同じシーンのはずなのに、編集によって全く違うものに感じてしまう。映画って面白いなぁ〜。