空中秘密基地 2

映画や本の感想が中心です。当然ですが僕の主観と偏見で書いてます?

人生は近くで見ると悲劇だが、遠くで見ると喜劇である

『日本で一番悪い奴ら』(監督:白石和彌 / 日本 135分)

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【あらすじ】
大学時代に鍛えた柔道の腕前を買われて道警の刑事となった諸星は、強い正義感を持ち合わせているが、なかなかうだつが上がらない。やがて、敏腕刑事の村井から「裏社会に飛び込み『S』(スパイ)を作れ」と教えられた諸星は、その言葉の通りに「S」を率いて危険な捜査に踏み込んでいくが……。(映画.comより)

2002年に北海道警察で起こり、「日本警察史上最大の不祥事」とされた「稲葉事件」を題材に描いた作品。白石監督の前作である『凶悪』がとても良かったので、楽しみのあまり小走りで映画館に行きましたよ!で、スゲ〜面白かった‼︎‼︎

マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』のようなコメディテイストの「実録ピカレスク映画」で、あ〜こんな作品が日本でも作られるんだなぁーと楽しい気分になりましたよ。特に刑事の諸星(綾野剛)とヤクザの黒岩(中村獅童)、運び屋の太郎(YOUNG DAIS)、盗難車バイヤーのラシード(植野行雄)のチーム感が最高!「拳銃を大量に摘発(というか購入)するためにシャブの密売を始める」という展開は、本末転倒にも程があって爆笑してしまいましたよ。でも笑いながら、この話って基本的に事実なんだよなぁ〜と思って、頭を抱えそうになったんです。最終的に覚醒剤に手を出してしまう諸星には情状の余地な無いんだけど、でも結局のところ何でもかんでもノルマを押しつけるシステムなんだよ。「一番悪い奴ら」ってのは警察組織そのものだよなと思ってしまうのです(そもそも犯罪検挙にノルマって…)。「えっ、拳銃、買うんですか?」っていう真っ当な突っ込みで爆笑したり、「えっ、麻薬、いいんですか?」って尋ねても「チャカと覚醒剤、どっちが大事だと思ってんすか?」と返す。それに対して「いや、そういう問題じゃ…」と気の弱そうな上司が言う。「そういう問題じゃ…」って、それは観客のセリフだよ。

でもこれって警察組織に限ったことじゃない。内部では成り立っていているけど、外側からから見ると「それおかしくないですか?」ということに疑問を持っていないという話って誰だって多かれ少なかれあると思うんですよ。だからこの映画はとても普遍的な物語でもあるのです。

「70年代末に金髪のチンピラっているか?」とかピエール瀧さんをもっと観たかった!とか、矢吹春奈さんはちゃんと薬を絶って幸せになってくれると良いなぁ〜とか、ちゃんとオッパイを揉んでる濡れ場が良かった‼︎‼︎とか、オッパイを揉んでる濡れ場が良かった‼︎‼︎‼︎とか言いたいことはたくさんあるんだけど、とにかく日本映画のエンターテイメントとしては、最近ではダントツでしょう。

原作の稲葉圭紹『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』(講談社文庫 2016・1)も面白いです。北海道警の悪行が、映画ではむしろ控えめに描写されていたという驚愕の事実を知ることが出来ます。ははは………。