空中秘密基地 2

映画や本の感想が中心です。当然ですが僕の主観と偏見で書いてます?

この素晴らしき世界

ファインディング・ドリー(監督:アンドリュー・スタントン / アメリカ 97分)

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【あらすじ】
カクレクマノミのマーリンが、ナンヨウハギのドリーと共に愛する息子のニモを人間の世界から救出した冒険から1年。3匹は平穏な日々を過ごしていたが、ある晩、ドリーは忘れていた両親との思い出を夢に見る。昔のことはおろか、ついさっき起きたことも忘れてしまう忘れん坊のドリーだが、この夢をきっかけに、忘れてしまったはずの両親を探すことを決意。「カリフォルニア州モロ・ベイの宝石」という唯一の手がかりから、人間たちが海の生物を保護している施設・海洋生物研究所に、両親やドリーの出生の秘密があるとを突き止めるが……。(映画.comより)

「いいところもあるけど、受け付けない部分もあった」映画でしたよ。とすごく普通の感想を書いてますけど……。まあピクサー作品だからクオリティは確かだし、ドリーの両親がドリーを思う気持ちにはしっかりと涙したのです。でもなんだかなぁ〜ってなったのも事実ではあるのです。

登場人物(いや、登場魚か⁉︎)は当然のことだけど、水の無いところは移動できない訳ですよ。たった数メートル先なのにどうにもならない。さてどうする?ってところが前作『ファインディング・ニモ』では面白かったんだけど、本作ではご都合主義の連発にしか見えなかった。タコのハンクの万能ぶりとか、魚に操られて何処にでも行ってくれる鳥のベッキーとかね。ラストのアクションだって「どうしてそうなるの?」という理屈の説明が雑だから、あんまりハラハラしなかった。

あと水族館に行くことを強く望むハンクをドリーが「狭い研究所ではなく外の世界のほうが幸せ」だとずっと説得するんだけど、僕は「別にそういう生き方も『アリ』なんじゃないの?」と思っちゃったんです。「そういう幸せもあるよね」っていう描写があると良かったなぁ〜。

不満なところばかり書いてきたけど、CGのクオリティは素晴らしいし、ドリーの家族の描写はとっても感動的だった!ドリーが言っていた「人生でいちばん素敵なことは、偶然起こるのよ」ってセリフもウンウンとうなづくばかりです。

また「障がいを持つキャラクターを主人公にする」というコンセプトは良いと思いましたね。本作のキャラクターは、ほとんどが何かしらの障がいを持っています。ドリーは「短期記憶障がい(short-term memory loss)」で少し前のことも忘れてしまう。タコのハンクは足が7本しかない。ジンベイザメのデスティニーは近視だし、シロイルカのベイリーは頭をぶつけた影響でエコロケーションが使えなくなった(と思い込んでいる)。そもそもニモも生まれつき片方のヒレが小さいせいで上手く泳げないんでしたね。特にハンクがどうして7本足になったのかという理由を描かないのは、ウマイ!と思っちゃいましたね。何でもかんでも説明すれば良いってもんじゃないのです。

彼らの「障がい」を「個性」として描いていくのはいいなぁ〜と思う。でもその描き方がちょっとストレートだったかな?同じディズニー・ピクサー作品である『ズートピア』では、「偏見を持つことの愚かさ」を表には出さず、極上のエンターテイメントとして描いていたのと比べるとね。でもピクサーの制作陣がそんなことに気づかないとは思えないんです。今、世界を見渡せば、アメリカやヨーロッパでは「差別したっていいじゃないか!」と大きな声で言い出す奴が増えたり(あまつさえ大統領候補になったり)、日本では「社会のために障がい者はいなくなるべきなんだ」と言って殺人を犯す奴が現れる世の中です。もうオブラートに包んでいる場合じゃないんだという彼らの声が聞こえてくるような気もするのです(考えすぎかも?ですけどね)。

クライマックスのシーンで流れるのは、ルイ・アームストロングの‘What a Wonderful World’。こんな世界になると良いですなぁ〜。

エンドロールは‘Unfogettable’です。日本語版では八代亜紀さんが歌ってます!