空中秘密基地 2

映画や本の感想が中心です。当然ですが僕の主観と偏見で書いてます?

思い出せば、かけがえのない日々

『エブリバディ ウォンツ サム‼︎ 世界は僕らの手の中に』(監督:リチャード・リンクレイター / アメリカ 115分)

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【あらすじ】
野球推薦で入学することになった新入生のジェイク(ブレイク・ジェナー)は期待と不安を抱き、大人への一歩を不器用に踏み出そうとしていた。そう、今日は野球部の入寮の日だ。お気に入りのレコードを抱え、ジェイクが野球部の寮に着くと、4年生のマクレイノルズ(タイラー・ホークリン)とルームメイトのローパー(ライアン・グスマン)から、好意的とはいえない歓迎を受ける。高校時代、イケイケのスター選手だったジェイクに対する先輩方の洗礼だった。しかも寮生活をしている先輩方は野球エリートとは思えない風変わりな奴ばかり……。(公式サイトより)

前作『6歳のボクが、大人になるまで。』(2014)では少年の成長とその家族の物語を、実際に12年間の歳月を費やして撮影したリチャード・リンクレイター監督の新作。今度は大学入学直前の3日間を描く。

とても眩しいキラキラした青春映画でありました。登場人物がとても多いのに、それぞれが個性的に描き分けられていて、リンクレイター監督らしい、とても丁寧な作品。

アメリカの青春映画では卒業までの数日間やプロムまでの様子を描いたものは多い。でもこの作品は大学入学を3日後に控えた青年の話です。この設定は新しいね。しかも主人公たちは「ジョックス」、つまりイケてるヤツらなわけですよ。これも今まであまり観たことがない。彼らは野球部の選手で大学のスターだ。すぐに友達ができ、連夜のパーティーがあって、さらに恋人まで作ってしまう。こんな奴らが実際に側にいたら、速攻で大っっっキライになるけど、映画として観た時、彼らの立ち位置が作品世界をより輝くものにしてくれる。車で女の子をナンパしに行く時、カーステレオから流れる‘Rapper's Delight’をみんなでラップするシーンの多幸感ったら、この上ないのだ。

リチャード・リンクレイター監督は、一瞬を切り取るのが本当に上手い。それは20年間にわたって撮り続けている『ビフォア』シリーズでも、ひとりの少年が6歳から18歳になる12年間を実際に12年間かけて撮った『6歳のボクが、大人になるまで。』でも、そしてたった3日間の話である今作でも変わることがない。それは何事も起こらない日常だけど、そこに生きている者にとってはかけがえのない何かなのだということを鮮明にする。

劇中ではTHE KNACKの‘My Sharona’から始まり、BlondieやCHIC、Van Halenなどの1980年に世界中で流れていた音楽が、これでもか!って感じで聴こえてくる。そしてふとした拍子に訪れる静寂。この緩急が心地よいのです。

僕の大学生活はこの映画みたいな感じじゃなかったけど、それでも何か懐かしさを感じる。それがこの映画の魅力だと思うのです。