それでも懸命に生きていこうとしている人たちへ〜11月のレヴュー〜
11月のレヴュー。基準はいつものように主観と偏見だけ。
『ひとよ』
父親の家庭内暴力から子どもたちを守るために、母親は罪を犯す覚悟をする。その後15年間にわたって姿を消していた母が、突然子どもたちの前に帰ってくる……。
この映画は家族の物語なんだけど、中心となる3兄妹と母親だけではなく、周りのいる人も含めて、誰にフォーカスするかによって感じ方が全く違ってくる。
田中裕子さんをはじめ、どの役者さんも素晴らしい演技をしていて目が離せない。その中でもMEGUMIさんが特に印象に残った。長男(鈴木亮平)の妻で離婚調停中の役だ。登場シーンはそんなに多く無いものの、彼女の存在が家族という閉じた関係の外にも世界はあるのだということを示している。かなり難しい役だと思うけど、彼女は見事に演じていた。
また白石監督の演出も食卓での仕草や変化、光の当て方など細部まで丁寧に作り込んでいる。
タイトルの「ひとよ」とは、母親が罪を犯した「一夜」のことでもあるし、また「人よ」という呼びかけのようでもあると感じた。
こういう作品に出会えるから、まだまだ日本映画も捨てたもんじゃない!って思っちゃうんだよな。
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☆☆☆…観ないと後悔しますよ!
☆☆……ちょっと時間があるって時にどうぞ
☆………観なくていいかも
◎は旧作
『空の青さを知る人よ』☆☆
→事前情報を入れずに観たのですが、意外に(?)良かった。TVシリーズの最終回という位置づけのアニメ映画が多い中、オリジナル脚本で映画として勝負していることを評価したい。音楽映画としても演奏することの喜びが表れていた。
『IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』☆☆
→前作の主人公たちが大人になって……という話なので、当然だけどジュブナイル感はなくなっていた。芸達者な役者陣の演技を観ることはできるけど、そこがかえってイマイチさを増幅させていたのかも?ラストはホラーじゃなくなってたしね。2作を再編集して、原作と同じ構成にしたらまた印象が変わってくるかも?
『ターミネーター ニュー・フェイト』☆☆
→1作目からずっと同じ話の繰り返しではあるのだけど、キャラクター設定はしっかり21世紀的なものにヴァージョンアップされていた。未来から来たターミネーターがまた液体金属だったのは残念。こっちの想像の斜め上をいく造形を期待してたんだけどね。ほとんど引退状態だったというリンダ・ハミルトンだけど、存在感が半端ないです。なんだかんだ言っても、僕はやっぱりターミネーターが好きなんだよね。
『ひとよ』☆☆☆
→「巻き込まれてやれよ!家族なら」というセリフが心に残る。
『閉鎖病棟 それぞれの朝』☆☆
→思い話でありながら、俳優陣の自然な演技がそれを柔らかいものにしてくれている。本作の小松菜奈について「激しい陵辱シーンを演じることで女優として一皮むけた」とかいう記事を見たんだけど、これを書いた人は小松菜奈の出ている作品を見たことがあるんだろうか?そもそも「陵辱シーン(ヌードを含む)=女優として一段上がる」図式はもうやめたらどうか?男性にはそんなこと言わないでしょ?ちゃんと演技を観ようよ。
『NO SMOKING』☆☆
→好きな音楽を遡っていくと、どのルートを通っても細野さんに行き当たる。大瀧詠一さんに師事している者としては、はっぴいえんどの話がもっとあれば良かったかな。
『アイリッシュマン』☆☆☆
→アル・パシーノとロバート・デ・ニーロが主演で、監督がマーティン・スコセッシ。そしてギャング映画となれば、Netflixで配信されていても映画館に行かない訳にはいかない。映画館の暗闇がよく似合う。冗長なところが無くはないけど、重厚な語り口に物語に没入してしまう。
『グレタ GRETA』☆☆
→サスペンス映画として驚くような展開は無いけど、イザベル・ユベールの演技をたっぷり楽しむことができる。クロエ・グレース・モレッツが出ている作品は全て観る主義ですが、眉間にシワを寄せて苦悶の表情をする以外の彼女も観たいなぁ。
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12月はとにもかくにも『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』。小学生の時にEp 4を観てから40年。僕たちの旅も終わるのか?そしてそれは新しい旅立ちなのか?刮目して待つ!