空中秘密基地 2

映画や本の感想が中心です。当然ですが僕の主観と偏見で書いてます?

「誇り」について〜4月のレヴュー〜

4月のレヴュー。基準はいつものように主観と偏見だけ。

2ヶ月遅れで開催されたアカデミー賞。作品賞はノマドランド』でした。この映画は「誇り」についての映画だと思います。人にとって譲れないものは何か?それについて考えさせられます。ただ本作に登場するノマドワーカーの殆どが白人であることは指摘しておかねばならないと思います。確かに彼らは貧困の中で生きているのかもしれない。でも黒人を始めとする有色人種はノマドワーカーにさえなることは出来ない。彼らがそんなことをしていたら、確実に逮捕され、最悪の場合は殺されるかもしれない。アメリカ社会のそういう現実も忘れてはならないと思っています。

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☆☆☆…観ないと後悔しますよ!
☆☆……ちょっと時間があるって時にどうぞ
☆………観なくていいかも

◎は旧作
ノマドランド』☆☆☆
ノマドワーカーは大半を60代以上が占めている.。これはやはり行き過ぎた現代資本主義が生み出した負の産物だろう。それでもスクリーンに映し出される顔はどこか清々しい。自由を得た人間の顔だ。僕も別れの言葉は「さようなら」ではなく「またな」と言いたい。そこに孤独に見えるノマドワーカーたちの絆があるのだろう。背景に映し出されるアメリカの自然の広大さと美しさに目を奪われる。ぜひともスクリーンで観てほしい。あと映画会社に一言。この映画にはパンフレットは必須です。今からでも作ってほしい。

トムとジェリー』☆☆
→クロエちゃんが出演する作品はすべて劇場で観る主義です。最高に可愛い(特に近年ではピカイチ!)のクロエ・グレース・モレッツと最高にキュートなマイケル・ペーニャを観ることができます。『トムとジェリー』は昔からいつもトムが不憫だと思っていたけど、本作でもそのテイストは変わらず。実写とアニメを融合させた作品としては、アニメパートを過度に

リアルに表現していないながらも全く違和感がない。技術の高さに驚嘆する。コロナじゃなかったらデートムービーとして最適だったろうな…。それが残念だ。  
ビバリウム』☆☆
→寓話的。悪夢のような感じがするのは、人間の生というものが悪夢だからだろうか?それでもそこに喜びを見出すことが生きるということなのか?と考えてしまう。

『パーム・スプリングス』☆☆☆
→人生は多かれ少なかれループしている。楽しけりゃそれで良いじゃないか?って思うけど、やっぱりそれだけじゃダメだよね…という気分にさせてくれる映画。過去は更新できるんだ。お気楽だけどどこか諦めてる男を演じているアンディ・サムバーグが最高。
『幸せへのまわり道』☆☆
→今のように殺伐とした世情だからこそ多くの人に観て欲しい映画。人生に大切な教訓があちこちに散りばめられているけど、ストーリー展開のテンポが良く、押し付けがましさを感じさせない。今更だけどトム・ハンクスは凄い。

『ドリームランド』☆☆
マーゴット・ロビーの彼女らしい魅力がたっぷり。前半のストーリーテリングに冗長さを感じたが、最後まで観るとその冗長さがアメリカ南部の重苦しい閉塞感を醸し出しているのだと思えてくる。
『街の上で』☆☆☆
→最初はちょっと間が長いかな?と感じる会話も次第に心地よくなり、あぁ今自分は今泉監督の映画を観ているのだな…という思いに満たされる。物語の背景を必要以上に描かない今泉監督の語り口も好きです。青の大きな目で凝視しているようで、何も見ていない気がする表情。それが作品の浮遊感を醸し出していたんじゃないだろうか?そういう意味で若葉竜也さんあってこそ映画でした。
『騙し絵の牙』☆☆
→テンポも良く、俳優陣もハマリ役で楽しく観ることができた。4月公開では一番のデートムービー。吉田大八監督の(作中のもの音を含めた)音楽の使い方の上手さは今作でも健在。それがまた楽しさを増してくれる。

『スタートアップ!』☆☆

→何よりもおかっぱ頭のマ・ドンソクがすべてを持っていってしまう。これはズルい!そこに目を奪われてしまうけど、パク・ジョンミンがすごく良いです。
『ザ・バッド・ガイズ』☆☆
→『スタートアップ!』よりもマ・ドンソク的要素は多めです。それだけで生きていくための活力は十分に摂取できます。ストーリーは予想通りといえば予想通りだけど、この映画ではそんなことは関係なく、個性的な登場人物たちが大暴れするのをただただ楽しめば良いのです。ラストの大乱闘は手に汗握る。

『AGANAI  地下鉄サリン事件と私』☆☆
→さかはら監督の対象に迫る手法や映画としての語り口は必ずしも賛成できるものではなかったけど、やはりこれは観るべき作品でした。あの一連の出来事が何だったのか?ということを考えています。1995年という年はいろんな意味において戦後が終わり、2021年の世界に直接つながる回路が開かれた年だと思っています。
『ブックセラーズ』☆☆
→やっぱり紙の本は良いです!という思いを強くする。たくさんの本が並んでいるのを観るだけで幸せになります。表紙を開いて最初の文字に目を落とし、時代にその世界の中に入っていく……あの瞬間が快感なんです。あと本作はエンドロール担っても席を立ってはいけませんよ。

SNS−少女たちの10日間−』☆☆☆

→幼い顔立ちの18歳以上の女優が「12歳・女子」という設定でSNSに友達募集をしたところどうなったのか?を映し出したチェコのドキュメンタリー。ショッキングだった。知識としては知っていたつもりだったが、実際に映像を観せられると唖然とする。子供たちはこんな危険と隣り合わせで生きているのか?SNSで少女に連絡してくる大人の殆どがいわゆる小児性愛者ではないことに驚く。それでは彼らの目的は何なのか?弱いものを服従させたいというドス黒い欲望なのか?SNSを遮断すれば危険は減る(無くならないけどね)かもしれないが、現代社会ではそれは不可能だ。それではどうすればよいのか?答えは浮かんでこない。 

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5月の楽しみはなんと言ってもゴジラvsコング』だったのですが……コロナによる非常事態宣言発出で公開延期。僕は何を縁に生きていけば良いのでしょう?

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