皆が同じことを思う
映画の日は勝手に音楽映画の二本立てで、『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』と『アメリカン・ユートピア』を音楽の役割が社会の統合と理不尽への異議申し立てであることを再確認する作品でした。
『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』:ただただアレサの歌声に圧倒される。CDの音源だけでも心をグッと掴まれるような感じになるけど、映像と一緒になると、そこに血肉が合わさったような新しい思いが浮かんでくる。「Never Grow Old」にはキリスト者ではない僕でも涙する。
『アメリカン・ユートピア』:トーキング・ヘッズはあまり熱心なリスナーではなかったし、デイヴィッド・バーンの楽曲は衒学的であまり好きじゃなかった。今作でも最初は抽象化された概念を歌う歌詞が多くて正直なところイマイチ入り込めなかったけど、次第に歌の中の世界が現実に切り込む具象化されたものになっていった。デイヴィッド・バーンをしてそうせざるを得ないアメリカ社会の現実なのか?でも全部ひっくるめて最高だったなぁ。世界中から集ったバンドによる演奏が熱を帯びるに連れ、こっちもついつい体が動いてしまう。やっぱり生音のプレイだってのが良いんだよね。
両作とも観客は熱狂する。人間は本来はバラバラな存在で、「わかりあえる」なんてのは幻想かもしれないけど、何か大いなるものや圧倒的なものを目の前にした時には、その個を飛び出し、皆が同じことを思うんだ……と改めて思う。
*写真は夕方のランドマークタワー。空の青さと雲の白さ、木々の緑が目に優しく映る。今年は梅雨入りが早いという話だったけど、横浜はまだその気配がない。こんな天気がずっと続けば良いのに。