空中秘密基地 2

映画や本の感想が中心です。当然ですが僕の主観と偏見で書いてます?

語り継ぐべき物語〜8月のレヴュー〜

8月のレヴュー。基準はいつものように主観と偏見だけ。

8月はどうしても戦争の記憶と結びつきます。東京大空襲や広島・長崎の原爆投下など、それを描いた映画は多く作られています。もう一つ忘れてはならないのは沖縄戦のことです。この戦いについては岡本喜八監督の『激動の昭和史 沖縄決戦』がとても濃い密度で描いています(誤解を恐れずに言えば、この映画はめちゃくちゃ面白い!)。そして今年の夏に沖縄の戦争について忘れられない作品に出会いました。三上智恵大矢英代監督『沖縄スパイ戦史』です。1945年6月に連合国軍の上陸により降伏した後も沖縄北部ではゲリラ戦、スパイ戦が繰り広げられていました。そしてその裏には身分を隠して沖縄の各地に潜伏していた工作員養成機関「陸軍中野学校」出身者42人の存在があったことについてのドキュメンタリーです。このことはあまり語られることはありませんでしたが、関わった人々の記憶には深く刻まれています。彼ら彼女らにとっての戦争はまだ地続きで存在しています。当然ですが登場する人たちはかなりのお年寄りばかりです。リアルな記憶を語れる人は遅かれ早かれいなくなるでしょう。こういう隠されてきた事実を記録して後世に伝えることも映画の大事な役割だと思います。必見の映画です。少しでもたくさんの人に観て欲しい。

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☆☆☆…観ないと後悔しますよ!
☆☆……ちょっと時間があるって時にどうぞ
☆………観なくていいかも
『劇場版コード・ブルー ードクターヘリ緊急救命ー』☆☆
→テレビでスペシャルとしてやれば十分だとは思うけど、日本の医療ドラマとしてちゃんと助けられない人もいることを描いているのは評価できる。ただ児玉清さんをオチに持ってくるのは反則かな?
『ゲッべルスと私』☆☆
→やはりハンナ・アーレントの「悪の凡庸さ」を想起せざるを得ない。こういう姿勢がナチスを誕生させたのだろうが、それは決して過去の話ではない。ただ同じような状況になった時に自分は抗することが出来るのか?と考えると、自信がないとしか言えないのも事実だったりする。
縄文にハマる人々』☆☆
縄文時代の不思議さを十分に伝えてくれるドキュメンタリー。一万年以上も前に作られた遺物が現代まで伝えられて来たことにただただ感謝。
ウィンド・リバー』☆☆☆
→カントリー・ノワールの新たな傑作。緊張、絶望、閉塞といったいろんな感情がスクリーンからビシビシ伝わってくる。事件が解決した後も、作中の人物たちの人生は続くのだというリアリティのある脚本が良い。
2重螺旋の恋人』☆☆
→ストレートな暴力描写がフランソワ・オゾンの映画にしては珍しいと思ったけど、結末はやっぱり十分すぎるほどのオゾンの映画だった。シンメトリーな構図や螺旋階段の描写などメタファーに満ちた画面構成は唸らせてくれる。それにしてもマリーヌ・ヴァクトの美しさよ!
ミッション:インポッシブル  フォールアウト』☆☆
→はっきり言うと、前作『ローグ・ネーション』に比べて脚本の粗さは否定できないけど、それでも作品ごとにどんどん進化していくトム・クルーズのアクションを観られるだけで大満足。トム走りも健在。走るだけで人を笑顔にするのはトム以外にはいないですよ。
オーシャンズ8』☆☆☆
→スピーディーな展開はいかにもオーシャンズシリーズらしい。全員が綺麗にドレスアップして颯爽と登場するシーンが、女性を主人公にした映画らしくて良かったな。凄腕スリ師を演じたオークワフィナさん。この人の名前を覚えて帰ってください!
スターリンの葬送狂騒曲』☆☆
→コメディだけど残酷描写もあって、国家の非情さもちゃんと描かれている。スターリン時代のソ連の歴史を勉強してから観るとより楽しめます。

ヒトラーを欺いた黄色い星』☆☆
→生き残った本人のインタビューとドラマを混ぜながら物語が進んでいく構成が面白かった。ナチス政権下のベルリンで潜伏していたユダヤ人の話は映画として初めて観たので興味深かった。人間ってしたたかだなぁ。
沖縄スパイ戦史』☆☆☆
→息がつまるようなドキュメンタリーだった。戦後70年が経つけど、語られていないことはまだまだある。その思いを強くした。その事実を掘り起こして記録したことだけでも、この作品には価値がある。必見。
菊とギロチン』☆☆☆
瀬々敬久監督の長年の思いがギッシリと詰まって爆発したような映画。189分という時間が短く感じられた。いろんな場面、いろんな意味で「時代と戦う人々」を描いている。どの役者さんの演技も素晴らしいけど(渋川清彦さんなんて涙なしには観られません!)、特にヒロインを演じた木竜麻生さんですよ!彼女はこれからあちこちで名前を聞くようになりますよ。きっと‼︎
追想』☆
→格調高いメロドラマだけど、僕には合わなかった。ただシアーシャ・ローナンは観る価値がある。『レディ・バード』の女子高生役とは全く違う演技の幅を感じさせてくれます。
タリーと私の秘密の時間』☆☆
→ヘッドホンや車といった小道具やそれぞれのセリフの隅々にまで丁寧に作り込まれていて、さすがはジェイソン・ライトマン監督だと唸ってしまう。すごいザックリ言えば母親が子育て中にある出来事を経験するって映画だけど、これは男性にこそ観て欲しい。シャーリーズ・セロンが『アトミック・ブロンド』の彼女と同一人物だとは信じられません。役者さんってスゲ〜な!

 

9月は『ザ・プレデター』と『MEG ザ・モンスター』しかないです!プレデターvsプレデター!巨大鮫vsジェイソン・ステイサム‼︎ 最高の時間が約束されているに違いない。

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