空中秘密基地 2

映画や本の感想が中心です。当然ですが僕の主観と偏見で書いてます?

本屋さんの話〜余白にちょっと〜

前々から行きたかった日本橋にある誠品書店へ。ゆったりした空間が心地よい。

 

人文学の書籍が中心となっているラインナップが嬉しい。自己啓発本や、もちろんヘイト本を置いていないのも素晴らしいと思います。本屋さんでああいう類を見るとゲンナリしてしまいます。

 

初来店の記念に岡本綺堂『半七捕物帳』を。やっぱり日本橋といえば半七親分だよね。ブックカバーも落ち着いた感じで好きです。

 

そこに行こうと思うだけで楽しくなる本屋さんが一つ増えた。

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*写真は誠品書店が入っているCOREDO室町テラス。本文とは関係ないけど、歴代オリンピックのポスターの中では、亀倉雄策デザインの東京オリンピック(1964)がやはり飛び抜けて素晴らしいと思う。

歌うということ

本当に久しぶりの楽しい音楽の時間でした。

カレンダーを見ると、前回の練習が4月24日だから、2ヶ月は歌っていないことになる。当然、一人で練習はしていたけど、やはり皆で声を合わせるのは何物にも代えがたい。隣で歌っている声を聴く。これだけのことがこの上ない幸せだと思わずにはいられない。

 

J.S.バッハのモテット「Jesu, meine Freude(イエスよ、我が喜び)」。まだまだ上手く歌える訳じゃないけど、目の前に楽譜があって、曲の構造を考え、ハーモニーの中で自分の役割に頭を悩ませることは、それこそ「我が喜び」であるのです。上手く歌えないのだって、「これから練習するぞ!」という思いのエネルギーになる。

 

現状ではマスクしての練習は仕方がないし、いつ発表できるのかも決まっていない。僕たちは一日も早く普通の生活が送れるようになることを祈って歌うだけだ。

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*写真は「Jesu, meine Freude」の楽譜。冒頭の和音が鳴る時、「あぁ…戻って来たんだな」という思う。

雨のふり方〜余白にちょっと〜

5:00起床。このところ目覚まし時計をかけていなくても、4:00から5:00の間で目が覚める。前の晩にどんなに遅くまで起きていてもだ。二度寝をしようとしてもなかなか寝付けない。で、仕方がないので本を読んだり書きモノをしたりしている。まぁ、これはこれで良いんじゃないかと思わないでもない。

 

朝食を食べてからクレアの散歩。散歩の途中でポツポツと雨が降ってきた。傘は持っていたけど、とりあえず屋根のあるところへ避難。案の定、ザァーっと雨足が強くなる。梅雨のといえば、一日中しとしとと降っていたものだけど、今年は夏の夕立かゲリラ豪雨じゃないかと思うくらいの土砂降りが30分ほど続くとピタッとやんで太陽が顔を出す。まったく変な天気だよ。僕は東京国立博物館にある長谷川等伯『松林図屏風』が好きで、公開されると観に行くんだけど、あそこに描かれているようなしっとりと湿気を含んだ日本の梅雨にはもう会うことが出来ないんだろうか?寂しいことだよ。

 

家に帰りYoutubeで落語をかけていたら、江戸家小猫先生の犬の鳴き真似にクレアが反応して、テレビの前で同じように遠吠えをした。ちょっと笑った。

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*写真は散歩の帰り道に咲いていた紫陽花。やっぱり紫陽花は雨に濡れているのがよく似合う。

Violence can never stop expressing!〜5月のレヴュー〜

5月のレヴュー。基準はいつものように主観と偏見だけ。

相変わらず東京・大阪の映画館の大半が休館となっている影響で、新作映画の公開数が激減している。人が街に出るのを抑えるってのは理解できるけど、じゃあ劇場やイベントはOKで、映画館はNGだというのはいくら考えても納得いかない。大手のシネコンはまだしも、ミニシアターはやっていけないよ。ミニシアターこそが映画の多様性を保証してくれるものなのにね。

ミニシアターの楽しみの一つにドキュメンタリーを観ることがある。ドキュメンタリー映画はこの世の中にはまだまだ知らいないことがたくさんあるってことを教えてくれる。そういうドキュメンタリー映画を積極的に公開している横浜シネマリンで、作品の上映に反対して右翼が押し寄せるという事件があった。『狼をさがして』という映画だ。横浜シネマリンは脅迫にも負けず最期まで上映した。僕はテロリズムには絶対に反対だけど、(たとえ自分の意に沿わないとしても)暴力で表現することをやめさせようとする行為にも断固反対だ。

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☆☆☆…観ないと後悔しますよ!
☆☆……ちょっと時間があるって時にどうぞ
☆………観なくていいかも

◎は旧作
『21ブリッジ 』☆☆
→映画として新しさがあるわけではないけど、1970年代のアメリカンサスペンス映画を受け継ぐ秀作。そこしっかりと現代的な問題点を入れているところも良い。地面も常に濡れてます。上映時間が90分台というのもこのジャンルの映画では大切なことです。脇役にも演技派の俳優を配し、彼らの物語としても観ることができるが、やはりチャドウィック・ボーズマンの存在感に圧倒される。彼の演技がもう観られないことは悲しい。フォーエヴァー−−−!!!!!

『BLUE/ブルー』☆☆☆
→𠮷田恵輔監督が両手でしっかり持っていることが強く強く伝わってくる作品。瓜ちゃんをはじめ、登場人物がみんなどこかで幸せに暮らしていると良いなぁ…と思う。

『狼をさがして』☆☆
→1970年代に連続企業爆破事件を起こした東アジア反日武装戦線のメンバーの現在を追うドキュメンタリー。韓国人監督が撮った映画だとは知らずに観た。対象に過剰な思い入れがなされていない点は良かったけど、淡々とした印象であったのも事実だ。当時の学生運動が過激化していく過程を知るにつれ、彼らの思想や闘争手法における戦略などがいかに稚拙で幼稚だったかと思わざるを得ない。そもそもテロリズムには断固反対だ。メンバーの一人が長い刑期を終えて出所するところでこの映画は終わる。最後に彼女に何か語って欲しかった。また「反日」という言葉がこの40年で意味が全く異なるものになったことに驚く。

『フィールズ・グッド・マン 』☆☆
→自分の作ったキャラクラーが意図せず人種差別主義者や白人至上主義者のアイコンになってしまい、それを取り返すために苦闘する原作者を追ったドキュメンタリー。編集のテンポが良く、原作者とキャラクターのカエルを重ね合わせる描写も好きです。インターネットにおける著作権のあり方も考えさせられる。どんなに小さなことだと思っても、芽は摘んで置かなければならない。近い将来、日本でも憲法改正が議論されるであろうが、その際に必ず同じような問題は起こる。「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉を思い出した。

『ビーチ・バム  まじめに不真面目』☆☆
→最初から最期まで主人公のムーンドッグはいろんなモノに酔ってるんだけど、ストーリーが進むに連れ、観ているこちら側にもその酔が回ってきてムーンドッグのことが大好きになっていることに気がつく。コロナで鬱屈とした毎日が続いているけど、そんな時でも超ポジティヴであれ!というメッセージがスクリーンからビシビシ伝わってくる。話は違うけど、アメリカの映画やドラマを観ていると、詩人という存在が社会で尊敬されている描写がよく出てくる。大統領の就任式でもアマンダ・ゴーマンさんが詩を朗読したことは記憶に新しい。そんな社会こそ文化的と言えるんだろうと羨ましくなる。

『ジェントルメン』☆☆☆
→面白い!ガイ・リッチー映画である感じが満載!!ジョークを交えた会話劇の背後で事件が進行する……彼にはやっぱりこういう映画を撮って欲しい。誰も信用出来ない、いつ誰が裏切るのかって話は大好きだけど、その中でもコイツらだけは仲間だって話はもっと好きです。マシュー・マコノヒーが『ビーチ・バム』とは180度違うビシッと決めた役柄で、これも良いなぁと思ったりして。あとミシェル・ドガリーが素敵でならない。

『ファーザー』☆☆☆
→スクリーンに映っているもの全てに意味がある。特に色彩が語るものは大きい。迷宮に入ったような感覚に陥るけど、色彩の変化をたどると、この映画が何を描写しているのかが分かってくる。何と言ってもアンソニー・ホプキンスの演技!素晴らしいという他に言葉がない。これを観るだけで映画料金を払っても良い。
『ライド・ライク・ア・ガール』☆☆
テリーサ・パーマーサム・ニールの親娘関係の微妙さを過剰にならずに描いているのが良い。エンドロールでのミシェル・ペインの発言(実際の彼女の映像)を観ると、競馬界の男尊女卑についての描写がもう少しあっても良いんじゃないか?とも思う。馬の体躯、競馬場や牧場の緑が美しい。ラストのレースシーンは結果を知っていても応援してしまう。これだけでスポーツ映画としては満足なのだ。

◎『ハローグッバイ』☆☆

→青春映画は出演している若い俳優さんたちがその時しか表現することが出来ない強さや脆さ、儚さをスクリーンに映し出す。本作での萩原みどり、久保田紗友もそうだ。とても小さな話だけど、その時代を生きている者には大きく切実なものだったことを思い出す。3世代の女性が一つの画面に映るシーンがある。それが人生というものか?

◎『るろうに剣心』☆☆

佐藤健をはじめとして役者陣のアクションには目をみはる。谷垣健治さん、さすがです!原作の一部を映画化しているので、原作を読まずに本作を観るとストーリーが把握しづらいかもしれない。まあ、そこは長い目で付き合っていきましょうよ。

◎『るろうに剣心  京都大火編』

→アクションは前作からパワーアップ!一人対多人数の戦いは面白いなぁ。画面の奥にいる人までちゃんと意味のある動きをしている。『伝説の最期編』に続くストーリーのため物語を広げまくっているので散漫な印象だけど、それは仕方ないよね。原作は未読ながら、このキャスティングは最高じゃないか?

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6月は映画館はどうなっているんでしょうね?ゴジラvsコング』はいったい何時になったら観ることが出来るんでしょうか?……と書いていたら7月2日から公開決定とのニュースが!勝つのはどっちだ⁉ でもその前に楽しみにしている作品もあるんです。それはクワイエット・プレイス  破られた沈黙』と『RUN / ラン』なんですね〜。

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皆が同じことを思う

映画の日は勝手に音楽映画の二本立てで、『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』と『アメリカン・ユートピア』を音楽の役割が社会の統合と理不尽への異議申し立てであることを再確認する作品でした。

 

アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』:ただただアレサの歌声に圧倒される。CDの音源だけでも心をグッと掴まれるような感じになるけど、映像と一緒になると、そこに血肉が合わさったような新しい思いが浮かんでくる。「Never Grow Old」にはキリスト者ではない僕でも涙する。

 

アメリカン・ユートピア』:トーキング・ヘッズはあまり熱心なリスナーではなかったし、デイヴィッド・バーンの楽曲は衒学的であまり好きじゃなかった。今作でも最初は抽象化された概念を歌う歌詞が多くて正直なところイマイチ入り込めなかったけど、次第に歌の中の世界が現実に切り込む具象化されたものになっていった。デイヴィッド・バーンをしてそうせざるを得ないアメリカ社会の現実なのか?でも全部ひっくるめて最高だったなぁ。世界中から集ったバンドによる演奏が熱を帯びるに連れ、こっちもついつい体が動いてしまう。やっぱり生音のプレイだってのが良いんだよね。

 

両作とも観客は熱狂する。人間は本来はバラバラな存在で、「わかりあえる」なんてのは幻想かもしれないけど、何か大いなるものや圧倒的なものを目の前にした時には、その個を飛び出し、皆が同じことを思うんだ……と改めて思う。

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*写真は夕方のランドマークタワー。空の青さと雲の白さ、木々の緑が目に優しく映る。今年は梅雨入りが早いという話だったけど、横浜はまだその気配がない。こんな天気がずっと続けば良いのに。

お楽しみはこれからも

落語をライヴで聴くようになって2年くらいになるだろうか?寄席や落語会に通うのがすっかり生活の一部になった。先週の金曜日も春風亭一之輔師匠の独演会へ。そもそも落語にハマるきっかけになったのも一之輔だった。袖からひょいひょいという感じで出てきて、高座に座る姿が好きですね。

 

金曜日の演目は四番弟子の貫いちさんの「転失気」で始まり、一之輔師匠は「やかん」と「てれすこ」を口演して仲入り。後半は「中村仲蔵」でした。一之輔師匠の「中村仲蔵」は初めて。4月に国立演芸場春風亭一朝師匠の「中村仲蔵」を聴いた。一之輔師匠は一朝師匠譲りの話運びだけどだけど、見えを切るところなんかはやっぱり若々しい。こういう「中村仲蔵」も良いです(緩急という点では一朝師匠が好きだなぁ)。一之輔師匠は子供を演じるのが上手いと言われていて、僕もそう思うけど、実は女性を演じる一之輔師匠も良いなぁと思っている。「粗忽の釘」のおかみさんとか「柳田格之進」のお母さんとかね。この「中村仲蔵」でもそうで、仲蔵が前を向くのに重要な役割をする奥さんは出番は少ないけど説得力があって印象に残った。

 

6月は独演会もあるし、浅草演芸ホールの中席ではトリを務める。お楽しみはこれからも続く。

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*写真は独演会の帰路、紅葉坂からみたランドマークタワー。撮影場所は江戸時代に神奈川奉行所があった場所。江戸と現代がつながった気がしないでもない。

 

 

秘訣〜余白にちょっと〜

日曜日から月曜日にかけては天気予報で梅雨前最後の晴れ間だと言っていたので、クレアを連れて三浦半島へ小旅行。たまにはクレアを広い場所で走らせてあげたいというのもあるけど、と同時に僕もいろんな事を忘れてのんびり太陽の光を浴びたいという気持ちも行きたいという動機の大きな部分を占めている。本格的な夏が到来する前に、どれくらい太陽の光を体に取り込んでおくのかが暑さを乗り切る秘訣だと思っているのです。

 

マグロを食べて(クレアもです!)、ドッグランで走り回って、ホテルではジェットバスに入って(クレアがですよ!)、夜は早々に爆睡。翌日はまた時間の許す限りドッグランで遊びました。とても楽しそうなクレアを見るのは、僕にとっても嬉しいことです。

 

充電はした。梅雨め、来るなら来てみろ!

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*写真は帰路に立ち寄ったなぎさ橋珈琲のテラスで写す。遠くには江ノ島、その向こうにはかすかに富士山が見えました。良い休日でありました。